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ビアチカ【レズビアンエロチカ】*移転しました*

レズビアンでエロチカな漫画・小説・イラスト等を発信する創作集団【レズビアンエロチカ:略称ビアチカ】※18禁/百合/GL

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ガールフレンド

20061220.jpg
 夢を見た。
 夢の中のわたしは、寛子に抱きしめられていた。
 彼のとは違うそれは、柔らかくて。だけど、抱きしめられている肌はなぜかとても息苦しそ
うで。
 そこで、わたしは目を醒ました。
 夢だと分かっているのに。寛子に抱きしめられた感触を、わたしの皮膚が、いつまでも忘れ
なくて。外出の準備をするにはまだ早い時間だったけれど、ざわめく肌を落ち着かせるため、
わたしは少し熱めのシャワーを浴びた。

***

 日曜日の昼下がり。自由が丘にある瀟洒なイタリアンレストランでわたし達は食事をしてい
た。寛子は向かい側の席で好物のアラビアータを美味しそうに頬張りながら、笑顔でこう云っ
た。
「昨日さ、愛の夢を見たんだ」
「わたし……」
『わたしも実は……』と云いかけた言葉を咄嗟に呑み込んでいた。
「……わたしの夢ってどんな夢?」
 多分上手く誤魔化せたと思う。朝起きてからずっと、皮膚の違和感は続いたままだ。夢の中
の出来事とはいえ、そんな風に感じさせている張本人は紛れもなく、目の前にいる相手。
 ――わたしの皮膚はどうしてしまったのだろう。
 喩えようのない初めての経験に、少なからず動揺をしているわたしをよそに、チャームポイ
ントの少し尖った八重歯を覗かせながら真っすぐにわたしを見つめたまま微笑んでいる。
「んー……内緒」
「……そぅ……」
 いつものわたしなら、夢の内容をしつこく訊き出していたに違いない。このあとスイーツフ
ォレストで少し高いケーキやタルトをたらふくごちそうしてでも。
「なんか今日、ちょっと変じゃない?」
 いつもと違う反応をするわたしに気が付いた寛子が、大きな目を更にまん丸くして、わたし
をいぶかし気に覗き込んでいる。
「……皮膚が」
 と呟いて我に返った。
「……皮膚? ……が、どうしたの?」
「そうそう、……皮膚のかゆみが今日はちょっと強くて……さ」
「あー、愛は結構乾燥肌だもんね」
「うん、ちょっと気になっちゃって……。食事中にごめん」
 と返事をして、露出していた腕の肌部分を少し大げさに擦ってみた。本当はかゆみなど少し
も感じてはいなかったけれど。
 ――寛子もわたしの夢を見たと云っていたし、今日は二人で食事する予定だったから、あ
んな夢を見たんだ。
 そう自分自身に云い聞かせてみたものの、時間とともに、わたしの皮膚はますます熱を孕ん
でいくようだった。

   ***

 寛子は高校時代からの親友。偶然にも三年間クラスが一緒という腐れ縁で仲良くなり、高校
を卒業して、社会人になった今も、月に一度程度の頻度で、ご飯を食べたり、買物に行ったり
している。わたしには青森に出張中の彼が居て、つき合ってもう四年になる。誰にでも優しい
けれど、誰よりも優しい人……。クリスマスなどのイベント日でも仕事を優先してしまう彼だ
ったが離れていてもお互い信頼し合っていた。遠距離恋愛中のわたしはここ数年、ステディな
相手が居ない親友の寛子と、様々なイベント日を一緒に過ごすことが多くなっていた。
 十一月下旬。インド料理店で食事をしていたわたしはカクテルをひとくち口に運んだあと。
「今年のクリスマスさー、沖縄とかに旅行に行きたいな」
 今年のクリスマスも仕事で帰京できないということを彼に事前確認していたわたしは、寛子
の都合を考えることなく、旅行の提案をしていた。当たり前の約束事のように。
「十二月はもういろいろ予定が入っちゃってるんだ。沖縄は一月に行こうよ。愛もさ、たまに
はクリスマスにコウジ君に会いに青森に行ったら?」
「えー、いやだー。十二月下旬の青森なんて寒いし、きっとクリスマスに行っても青森じゃイ
ルミネーションとか盛大じゃないだろうし」
 寛子が友達として凄くまともなことを云っているのは理解できる。仕事中とはいえ、クリス
マスの日に彼に会いに行くという考え方のほうが普通かもしれない。でも今更過ぎる。わたし
は今年も彼とではなく、寛子と一緒にクリスマスを過ごすと思っていた。自分勝手な予定では。
 それに寛子からは彼ができたという話は一言も訊いていない。じゃあ、他の友達と過ごすの
だろうか。
 いつもならきっと、クリスマスの予定を訊ねている。なのに今日も……。もどかしいような
皮膚の異変を感じはじめてから、自分自身でもおかしい様子を自覚はしている。
 でも。彼だろうが、友達だろうが、どちらでも良かった。今年のクリスマスに〈わたし〉以
外の誰かと過ごす選択をする寛子を、想定していなかった自分にただ戸惑っていた。
 
   ***

 わたしの『皮膚』は日を追うごとに、その感覚をよりリアルな存在へと成長させていた。二
か月に一度しか会えない彼に抱かれているときでさえも、皮膚は彼以外の柔らかさを欲し、本
来の居場所を求めて疼き、わたしは幾度も背徳感に苛まれた。
 十二月中旬。「忙しい」と電話口で云っていた寛子を、「以前、寛子が行きたいと云っていた
スペイン料理店の無料お食事券が当たって、その券が二十四日までだから」と、強引に誘う形
でクリスマスを前に会う約束を取り付けた。
 クリスマスにはやはり会わないけれど、彼との仲も変わりないわたしは取り立てて話す内容
は何一つなく。スペイン料理店では、高校時代の友達の噂話など他愛のない話ではしゃいだ。
 店内中央には、一週間後に控えたクリスマスを前に、店の広さとは不釣り合いなほどの大き
なクリスマスツリーが飾られ、豪奢な店の雰囲気を更に華やいだものへと演出していた。けれ
ど、わたしはこの日も寛子のクリスマスの予定について、言葉を継ぐことができなかった。
 閉店時間が訪れ、半ば店を追い出される形で、わたし達はスペイン料理店をあとにし、駅へ
と向かった。寛子とは同じ路線だったが、二人の家の中間地点であるその駅からは逆方向の電
車に乗ることになる。
 三分ほど経って、寛子が乗る青色の電車が先にプラットホームに入った。
「今日は美味しかった。ごちそうしてくれてありがと。次に逢えるのは年明け一月頃かな? 沖
縄は行けたら行こ。じゃあ……またね」
 急ぎ足で扉の開いた電車に乗ろうとする寛子の遠のいていく後ろ姿に、全身を貫く傷みに耐
えきれなくなったわたしの皮膚が確かな意思を持ったかのように、寛子の華奢すぎる細い腕を
強引に引き寄せて、〈今度〉はわたしがこの手で寛子を抱きしめていた。よく思い出せないけ
れど。強張っていた寛子の身体がほんの少し自分に委ねられたように感じた刹那、突き飛ばす
ように、満員電車の中へと寛子を押し込んだ。
 
 人波で奥へと押し流された寛子の表情を確認することができないまま、出発してしまった電
車を見送りながら、夢を見るまでは考えもしなかった衝動の理由を独り探していた。
 本当は〈友達〉という場所に感情を仕舞いこんでいるだけなのかもしれない。
彼とは違う、永遠に続く関係性を手に入れていたいだけなのかもしれない。
 ……どちらも、今のわたしには分からない。分からないけれど、それでも今は。わたしには
彼が居て、寛子は友達で。友達以上でもそれ以下でもなくて。
 喧嘩も多いけれど、いつも寛子の前では素直な自分で居られる。だから……。
 帰り際、「年明けに逢おう」と云ってくれた寛子は来年も〈友達〉のままで居てくれるだろ
うか。
 「あけましておめでとう」とわたしが云ったら、困惑した顔つきで……それでも優しい顔で
微笑んでくれるだろうか。
 夢のあととは対照的に、わたしの皮膚は、ようやく以前のような静けさを取り戻していた。
 息苦しいほどの柔らかさを、心地よい柔らかな温もりへと代えて。
Fin


※この小説は下記のpinkの絶版同人誌より再録いたしました。

同人誌奥付
誌名 ガールフレンド
発行 Pink Project
発行日 2006年12月
編集 ミキティ
表紙&本文デザイン ひな
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