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ビアチカ【レズビアンエロチカ】*移転しました*

レズビアンでエロチカな漫画・小説・イラスト等を発信する創作集団【レズビアンエロチカ:略称ビアチカ】※18禁/百合/GL

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夜の森の少女たち<1>

<1>
 森の中へ夜がやってきて気温が下がると娘は目を覚ました。
 薄暗い部屋の中を風が動いた。
 一部屋しかない小屋の木のドアが開いたままになっており、そこから風が入っ
てきていた。
 娘は薄暗闇の中で床を見下ろした。
 そこにはベッドに向かってうつ伏せに倒れている男の姿があった。
 また・・・・・・、とため息をついた。
 そのひと息でこの世の男は死に至る。
 娘は暗がりの中でベッド脇にある小さな引き出しの上のランプに火をつけた。
 部屋が明るくなると娘は男の体を確かめた。
 男は中肉中背で浅黒い肌に無精ひげを生やし、乱杭歯がのぞいていた。汚れて
垢染みた服からは嗅ぎ煙草と酒の臭いがして、娘は顔をしかめた。酔っ払いの度
胸試しでここへやってきたのだろうか。
 ここに来る男たちは酔っ払いか道に迷った老人か盗賊くらいしかいなかった。
いずれにせよ迷惑な話だ。目が覚めたらそばに死体があるというのは。
 娘は男の体を引きずって小屋の外に出すと、そこで手を離した。
 朝になれば「家」のものが見つけて始末してくれる。いつもそうしていた。
 娘はうす汚れた男の体や彼の体から移った煙草の臭いに顔をしかめ、月明かり
の下、明かりを持たずに森の中を歩きだした。

 娘の出てきた小屋から少し歩いたところに小川が流れていた。娘はためらうこ
となく着ていたワンピースを脱ぐと水に入った。
 よく考えたら不思議な光景だ。森の中にある小屋でたった一人の少女が寝起き
し、日が沈んでから月の光を頼りに水浴びを始める。川の水は冷たいだろうに、
娘は震えることも怖がるそぶりもみせずに気持ちよさそうに体を水に浸していた

 そのとき、草むらがかさりと音を立てた。
 娘は動きを止めて音のしたほうを見つめた。
 そこには十をいくらも越えていないくらいの、痩せて粗末な身なりの少女が立
っていた。
 少女のほうでも驚いたように目を大きく見開き、川の中にいる娘を見つめてい
た。と、少女の体が傾き、草むらの上に倒れた。そのままぴくりともしない。
 己の毒の息のせいだろうかと娘は胸が罪悪感にかられたが、相手は少女だ。男
ではない。
 わずかに逡巡したが、娘は川から出ると濡れた体にワンピースを被って少女に
近づいた。
 少女はがりがりに痩せて手足にはいくつも擦り傷があり、黒い髪がもつれて乱
れていた。着ているのは枯れ葉でできた質素な貫頭衣で、その裾は太股ぎりぎり
までしかなかった。そして夜眼と遠目で見間違いかと思ったのだが、少女の肌は
濃い緑色をしていた。
(緑の子?)
 物語や伝説にある森の緑の子だろうか。
 娘は驚いたが、それ以上に緑の子がこれほど傷ついて衰弱していることに衝撃
を受けた。なぜこんなに傷ついているのだろう。
 「家」の者が連れてくる娘たち以外の人間に会うことがない娘は、畏怖の念と
いささかの好奇心をもって枯れ枝のように軽い少女を抱えると、小屋へ連れてい
った。

 緑の子どもをベッドに寝かせ、川の水を汲むと娘は少女の体を拭き始めた。
 小さな桶に手足の先を浸して爪の間に入った土を取り、髪に絡まった木の葉を
摘む。
 こんなふうに誰かの世話をするのは初めてで、幼い妹の面倒(彼女に姉妹はい
ないのだが)や人形遊びの延長のようで娘は楽しかった。
 顔の泥を拭い、スカートをめくると、下着をつけていない平坦な腹と胸が出て
きた。
 ランプの下であらためて見る少女の肌は苔のように深い緑色で髪は真っ黒だっ
た。雪のように白い肌で榛色の髪と瞳の娘とはまったく違う。だが体のつくりは
ふつうの人間と同じだった。
(お腹が空いていたらどうしよう)
 娘はそれだけが心配だった。娘はもはやふつうの人間と同じものを食べない体
になっていた。だから小屋には食べ物が置いていなかった。
 少女は目を覚ます気配がなかった。
 あと一刻もすれば夜が明ける。
 娘は日の光を浴びても体に異変は起こらなかったが、目を覚ますことはなかっ
た。
(入れ違いに目を覚ますかしら?)
 せっかく出会えたのに話ができないのはつまらなかった。
 そのうえ困ったことに、小屋にはひとつしかベッドがなかった。
 夜明けぎりぎりまで待ってみたが少女は目を覚まさなかった。仕方なく娘は少
女の体を脇に寄せると、半分開いた空間に身を横たえた。

 夕方近くに緑の子どもは目を覚ました。傾きかけた日差しの中で傍らに眠る人
間の姿にぼうぜんとする。
 穏やかな寝顔を息をつめて見つめる。美しい娘だった。
 傷ついた自分をここまで運んだのはこの娘だろう。
 この人間はどういう人間だろうか。
 そのとき緑の子どもは自分の体がきれいに拭かれていることに気づいた。
「・・・・・・」
 緑の子どもは無言で、眠り続ける娘を見つめ続けた。

 その晩、娘が目を覚ます少し前に来客があった。
 緑の子どもはベッドに寝転がって娘の寝顔を見ていたが、外で馬車の音が聞こ
えると即座に身を起こした。
 どこかに隠れようとしたが、場所がない。部屋の隅にある衣装箱は小さくてい
っぱいに入っていたため、子どもが隠れる空間はなかった。
 仕方なくベッドの下に潜り込むと、間一髪、小屋のドアが開いて一人のスカー
ト姿の人物が入ってきた。
 軽い足取りと細くて張りのある足の形から、訪問者が若い娘とわかった。
 小屋に現れた娘は入り口で部屋の様子を伺っていたが、意を決したようにベッ
ドに近づいてきた。ドアの外では馬車が立ち去る音が聞こえた。
 訪問者はベッドに近づくと、そこに眠っている娘を観察しているようだった。
 やがて彼女はため息をつくと、薄暗くなりつつある部屋に明かりをつけた。
 緑の子どもはどきどきしながらどうしようと思っていた。
 外の世界から現れた娘は椅子に腰掛けて何かを待っているようだった。
 ―――やがて日が沈み、眠っていた娘が目を覚ました。


【続く】


■ち様個人サイト:たらちね

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| 【ゲスト:小説】ち様 | 12:08 | comments(-) | trackbacks:0 | TOP↑

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