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ビアチカ【レズビアンエロチカ】*移転しました*

レズビアンでエロチカな漫画・小説・イラスト等を発信する創作集団【レズビアンエロチカ:略称ビアチカ】※18禁/百合/GL

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千代と高尾<1>

題名  千代と高尾
著者 藤間紫苑





夢なんですわ、きっとこれは夢……。
私は女の後ろ姿を汽車の中で見付けた時、そう思いながら何度も瞬きをした。
女は平均的な日本人女性より、頭一つくらい背丈が高く、髪型をデートリッヒのような巻き毛にし、薔薇の造花を挿していた。きっと銀座を歩く時には洋装なのだろう。
肌の色は浅黒かったが、白粉は塗らず、髪に挿した造花の薔薇と同色の紅い唇をしていた。その紅は私の見た事のない色で、輸入物だと思われた。
女は手摺に寄り掛かりながら、流れる風景を親の敵のように見つめていた。特別車ではない普通車に何故乗っているのだろうか、そんな疑問を持つ前に、私は女に声を掛けていた。

「ねぇ、ちょっと貴女。小牧高尾さんじゃありませんか。」

私の声に女は振り返り、こう答えた。

「貴女なんて知らないわ。」

「私は貴女を知っているわ。私の名前は千代。私……」

高尾は私の言葉を遮った。

「千代。
 あの三流作家とおんなじ名前ね。改名すべきだわ。
 貴女、あのスキャンダラスな艶本を読んだというの。」

高尾は唇に薄笑いを浮かべながら私を見た。
ああ、この笑みよ、私が求めていたものは。
私は体がきゅっと引き締まるような快感を覚えた。
高尾本人だという確信を持った私は、女の右腕を掴み抱きしめた。

「ええ、読んだわ。宇野千代さんが書かれた『色ざんげ』でしょう。
 私、何度も、何度も読んだわ。
 貴女が湯浅譲二に一目惚れして駅でずっと待っていた話、ホテルに行った話、家出した話から、家が没落した話、それから商才を発揮なさって成功された話、私、何度も、何度も貴女の章を読み返したのよ……でも『色ざんげ』には、貴女の素晴らしさが書き込まれていないわ。
 きっと、書けなかったのよ、貴女が素晴らしい女性だって。だって……だって……。」

私は高尾の腕を握り締めながら、彼女の顔をじっと見詰めた。

「だって……こんなに貴女の事が好きだなんて……言えなかったのよ……きっと……作者は。」

私は高尾の瞳を覗き込んだ。
高尾はその浅黒い顔に残酷な笑みを浮かべた。

「貴女は私の事が好きなの?」

高尾のはっきりした声は、車内に響き渡った。
海兵服を着た女学生達が私達の方を見ながら、声を立てずに笑った。
海水浴に来た学生達は、ちょっとの間、話を止め、聞き耳を立てた。
私は恥ずかしさを感じ、さっと俯いた。
こんな気の弱い私を高尾は責めるだろうか。
嫌いにはならないだろうか。
私は高尾の腕をさらに強く抱いた。
私は自分の胸に高尾の腕をさらに強く押し付けた。
暫くすると、車内は再び旅行者達の喧騒に包まれた。

「わ、私……、高尾さんが好き……です。」

私は俯きながら、そう言った。
汽車の、痺れるような振動が高尾の体を伝わって、私の体内に流れ込んできた。


<続く>

■文:藤間紫苑 →HP
■作者コメント:お久しぶりです。藤間紫苑です。
この作品は宇野千代の『色ざんげ』を一緒に読むと、さらに面白いので、ぜひ!
現在、今冬発行予定のドリンク擬人化小説『伊藤君と円先輩』を制作中です。こちらもよろしくね☆彡

<次回予告>
二人は潮風が薫るホテルへと入っていく。
鞄の中からこけしを出す高尾。
二人の愛が高まる。



ビアチカ編集部コメント
ラブピースクラブ様コラム「週刊レズビアンエロチカ」にて今冬、ほぼ月刊連載決定!
藤間紫苑様作、小説「千代と高尾」のブログ版第1話、ビアチカblogで先行配信!
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